#B777

B777の構造

Mechanism of B777

B777の設計

開発当初からの合言葉"Working Together"を基に設計された。

"Working Together"とは、ローンチカスター/エンジンメーカー/各種サプライヤーとBoeing社が作業グループを作り、意見交換をしながら機体の構成を練っていくことで、日本のエアラインではANAとJALが開発段階からリスク分担パートナーとして加わり、全体の20%超の作業シェアを獲得した。

設計作業は初めて全てコンピュータにより行われ、コンピュータ内での仮組立てを可能にし、モックアップ製作を不要にした。これらはダッソー・システム社が開発したCATIA(3次元設計ソフト)と1700台のワークステーションで行われた。この技術は次世代737ファミリー(B737-600/700/800)の開発にも活用された。

B777の主翼

777の主翼は新設計された新技術主翼。

当時の駐機スペースの関係から、主翼に折り畳み機構を設けることが計画されたが、エアラインからの「重量増加」と「安全面での不安」とANAの要求からオプションに変更された。現在までそのオプションを採用したエアラインはない。

フラッペロンについて

旅客機の主翼後縁にはエルロンとフラップが装備されているのが一般的だが、B777には「フラッペロン」というフラップとエルロンの役割を同時に果たす高揚力装置が装備されている。

離陸時、このフラッペロンの動きは興味深い。
パイロットがエンジン出力を上げ飛行機がローリングをするかしないかのところでそれまでニュートラルの位置にあったフラッペロンは"だらん"と宙ぶらりんの状態になる。これはエンジン出力を上げるときにフラッペロンのアクチュエータがあまり良い働きをしないようで、このフラッペロンが宙ぶらりんのまま(=機能しないまま)飛行機は離陸滑走を開始する。そしてある程度滑走速度が出てきた頃、まだ車輪が地面についている段階でフラッペロンはオリジナルの位置に戻り、制御が開始される。

その様子はこちら。何気なく見ていた翼でも気付くととても面白い( 'ω')

レイクド・ウィングチップについて

B777ファミリーの中でも、B777-300ERと-200LRの主翼端には「レイクド・ウィングチップ」と呼ばれるチップが装着された。

これは、B767-400ERで採用された、主翼端をやや上方に傾け、後退に延長させたもの。片側幅は約1.98mもある。

このチップが装着されているため、-200LR/-300ERの全幅は、-200/-300よりそれぞれ3.86mほど大きくなっている。

このチップにより飛行時の抵抗が2~3%減少すると考えられている。

B777-300ERのレイクド・ウィングチップ

B777の胴体

777の胴体は直径6.2mの真円断面。
Boeing製の旅客機で真円断面が使用されたのは、 777が初めてとなった。

また、B777を形作っている素材は、重量比10%が複合材料である。炭素繊維強化プラスチックや繊維強化プラスチックがエンジンカウルや翼の周りなどに使用されている。(これに対しB787は重量比の50%を複合材料が占めているらしいので時代の進歩を感じてしまう。。。)

B777の飛行操縦装置

777の飛行操縦装置には、デジタル式FBW(Fly By Wire)が使用されている。

FBWとは、パイロットの操縦操作を電気信号に変えてそれにより各舵面(エルロンやラダー等)を動かすシステムのこと。(⇔それまでは操縦棹と各舵面はケーブルで繋がっていてアナログで動かしていた。)

777のFBWによる操縦則を確率させるために、B757を改造したテストヘッド機が造られ、1992年の夏に飛行を行った。このテストヘッド機は操縦席左側が従来のB757の操縦装置で、右側席にB777のFBWを挿入した操縦装置が設置された。

BoeingのFBWは最終的な優先権がパイロット=人間側にあるという特徴があり、そこがAirbusとの違いである。(B787はシステムがある程度優位に立っている、らしい。)

地上走行カメラシステム(GMCS)

-300/-300ERの尾部、左右水平安定板下面と中央胴体下面には地上走行カメラシステムが装備されている。

これは機体が大きいため、車輪と誘導路の関係を目視で確認するために取り付けられている。(なので-200がモデルの-200LRにはこのシステムは装備されていない。)

B777のエンジン

B777ファミリーのエンジンは次のように選択式になっているタイプが多い。

  • B777-200
    • Pratt&whitney社(PW社)のPW4000シリーズ(PW4084/4074/4077等)
    • General Electric社(GE社)のGE90シリーズ(GE90-76B等)
    • Rolls-Royce社(RR社)のTrent800シリーズ(Trent875/877/884等)
  • B777-200ER
    • PW社のPW4000シリーズ(PW4090等)
    • GE社のGE90シリーズ(GE90-90B/92B/94B等)
    • RR社のTrent800シリーズ(Trent884/892等)
  • B777-300
    • PW社のPW4000シリーズ(PW4090/4098等)
    • GE社のGE90シリーズ
    • RR社のTrent800シリーズ(Trent892等)
  • B777-200LR
    • GE社のGE90シリーズ(GE90-110B1)
  • B777-300ER
    • GE社のGE90シリーズ(GE90-115B)
  • B777F
    • GE社のGE90シリーズ(GE90-110B1)

B777-200LR、B777-300ER、B777FはGE社製のエンジン一択となっている。
これは、重量増加型に必要な大推力のエンジンの開発にはコストがかかり、しかもそのエンジンが特定の機種にしか取り付けられないとなるとそれほど大きな市場は期待できないためである。(実際GE社はGE90-110B/-115Bの開発に新規エンジンの開発に匹敵するほどの投資を行ったと言われている。)

B777-300ERのエンジン(GE製)

B777-200ERのエンジン(PW製)

日本のエアラインであるANA、JAL(とJAS)はそれぞれ以下の選択を行った。

-200-200ER-300
ANAPW4074/4077PW4090PW4090
JALPW4084GE90-94BPW4090
JASPW4084導入無し導入無し

ちなみに-300ERに取り付けられているGE90-115B、一基の最大推力は127,900lbs(58,014kg)。B747-400のエンジン(CF6-80C2)一基の推力が約60,000lbsと言われているのでそのパワフルさが分かる。またファンの直径もGE90-115Bは3.25m、CF6-80C2は2.4mと大きさも全く桁違いということが分かる。

B777のエンジンについて詳しくは別ページに記載。

B777のテイル

飛行機の種類を見分ける方法はたくさんあるが、とりわけB777を見分けやすいのがお尻の部分。

通常、旅客機の尾部の形状は、「離陸時の引き起こし角度が十分取れる」かつ「巡航時に機体全体の空気抵抗が最も少なくなる」ように設計されるので、ほとんどの種類の機体は尾部に向けて絞られるような形をしている。

しかし、777は胴体直径が太くなったため、引き起こし角度を確保するために下から削ぎ上げるような形状にするしかなかったため、その代わりに巡航時発生するクロスフロー(*1)を最低限抑え込むため、今となっては777の大きな特徴となったフィン形状の尾部となった。

テイル・スキッド

-300/-300ERの尾部下面には引き込み式のテイル・スキッドが取り付けられ、尾部を保護している。

-300/-300ERに取り付けられているのは、「オイル・ダンパー式のショック・アブソーバー」と言われるもので、ショックを受けると油圧ストラット内で吸収して時間が経つと元に戻る。空気抵抗を減らすため、ギアのUP/DOWNに合わせて引き込みと展開を行う仕組みとなっている。

[余談]
ただ、比較的製造年月日が新しいB777にはこのテイル・スキッドは装備されていない。ソフトウェア(TSP等)の方で十分になったのかと個人的には推測しているところ。

テイル・ストライク・プロテクションシステム(TSP)

フライト・コンピュータに組み込まれている、機体尾部が接触しないよう操縦システムを制御するもの。

巡航時の空気抵抗:機首から胴体に沿って機体尾部まで流れてきた空気流が絞り込まれた胴体後部を通過する際に横に流れ込み抵抗になる。これがクロスフローと呼ばれる。

B777の主脚

B777を見分けるもう一つの大きな特徴が、脚、メインギア。

777のメインギアは、片側3列の6輪ギアとなっている。ギア(脚)は正式には着陸装置(landing gear)といい、緩衝支柱(shock strut)と車輪、タイヤで構成されている。

777の緩衝支柱は「ドラッグブレース」と「サイドブレース」という支柱で下げ位置に固定されるようになっている。下端はトラック(タイヤを支える機棒)が接続されており、トラックにはそれぞれマルチディスクブレーキを介してタイヤが取り付けられている。

離陸後メインギアを胴体に収容するときは、トラックを正しい角度に保持しなければならないので、油圧のアクチュエータが取り付けられている。

メインギアの後部のタイヤ2本には、大きな機体の機動を良くするためにノーズギアに連動して左右にステアリングできるようになっていて、ノーズギアが10°以上切られると2個のタイヤも比例して回転し、最大8°動く。

セミ・レバード・ギア(SLG)

-300ERと-200LRの主脚は他のB777と少し異なっており、セミ・レバード・ギア(SLG)と呼ばれる機構が装備されている。

左:-200の主脚 右:-300ERの主脚

これは777ファミリーで一番巨大で重い-300ERの離陸を助けるために考えられたもので、メインギアの最前輪車輪軸と脚柱の間に油圧アクチュエータを取り付けて最後輪との引上げ角を変えることで、離陸引き起こし時に最後輪の持上げ角が9.98°になったとき、後ろ2組の車輪に力の中心を移す(機体重量を掛ける)ことで最前輪は機体中心線に対して11.00°の角度を有することができる。

分かりやすく言うと、離陸引起こし時、後輪2輪でつま先立ちしている形になり、その分だけ機体を高く持ち上げられる。その効果により、離陸に必要な滑走距離の短縮とローテーション時の地面と胴体後部の間隔に余裕を持たせることが可能になっている。
Boeing社の解析では、離陸距離の600ft短縮に貢献しているとのこと。

-300の離陸時の主脚(機体の浮き上がりと同時に車輪を浮いている)

-300ERの離陸時の主脚(機体が浮き上がっても最後まで踏ん張っている)

つまり、(素人目線で考えると、)体が重いから離陸のときになかなか機首が持ち上がらない。それなら地面で背伸びすればいいじゃん、という機構である。

このSLGは-300ERのために考え出された機構だが、-200LRにも装備されている。文献によると、機構自体は全く同じで、前の2輪を持ち上げる油圧ストラットは固定されており、主脚を収容する際に車輪をわずかに動かす必要があり、そのためのアクチュエータは残されているとのこと。

[余談]
ただこのSLGが働いている様子は、機体が相当重くないと顕著に分からないのか、なかなか見ることは難しいです。

関連記事

B777のフラッペロン。